軽天・ボード工の仕事とは

建物をつくる工程の中で「軽天工事」と「ボード工事」は、内装の骨組みと仕上げを担う重要な仕事です。一般の方にはあまり馴染みがないかもしれませんが、軽天・ボード工の技術なくして、私たちが普段目にする内装空間は成り立ちません。この記事では、そんな軽天・ボード工の仕事内容を詳しく解説していきます。

■ 軽天工事とは?──天井や壁の“骨組み”を作る作業

「軽天(けいてん)」とは「軽量鉄骨天井下地」の略で、建物の内装の天井や壁の骨組みを、軽量鉄骨材(主にLGS:Light Gauge Steel)を使って組み立てる工事のことを指します。木造とは違い、鉄製の部材を使うため「錆びにくく」「曲がりにくく」「寸法の精度が高い」といったメリットがあり、現代の建築現場では多く採用されています。

軽天工事の主な現場は、オフィスビル、商業施設、マンション、病院、学校など多岐にわたります。鉄骨やRC構造の建物では特に需要が高く、建物の規模や用途に応じた柔軟な施工が求められます。

【作業の主な流れ】

  1. 墨出し作業
     建物の設計図をもとに、実際の天井や壁の位置を床や天井に「墨(すみ)」で記していきます。精度が求められる非常に重要な工程です。
  2. ランナーとスタッドの設置
     床や天井に「ランナー」と呼ばれる水平部材を固定し、そこに「スタッド」と呼ばれる縦方向の部材を等間隔で取り付けていきます。
  3. 開口部の調整
     配線やダクト、窓やドアの開口部なども考慮しながら施工します。ここでの丁寧さが後の仕上がりに影響します。

■ ボード工事とは?──下地にボードを貼り仕上げる工程

軽天工事で組んだ骨組みに対して、次の工程として「石膏ボード」を貼っていく作業が「ボード工事」です。石膏ボードは、断熱性・防音性・耐火性に優れた内装材で、最終的なクロス貼りや塗装の下地にもなります。

【使用する材料】

  • 石膏ボード(一般的なものの厚みは9.5mm〜12.5mm)
  • 化粧ボード(仕上げ材として使われることもある)
  • 防音・耐火・耐水など、用途に応じた各種ボード材

【作業の主な流れ】

  1. ボードの採寸・カット
     現場の寸法に合わせてボードをカットします。1mm単位の精度が要求されるため、測定ミスは許されません。
  2. ボードの固定
     ビスや専用工具で骨組みにボードをしっかりと固定していきます。隙間や段差が出ないよう丁寧な施工が求められます。
  3. パテ処理・仕上げ
     ボード同士の継ぎ目やビス穴をパテで埋め、平滑に仕上げます。この作業がクロス仕上げの完成度に直結するため、非常に重要な工程です。

■ 現場の1日の流れ──軽天・ボード職人の仕事スタイル

現場で働く職人たちは、規則的で効率的なスケジュールで作業を進めています。以下は、軽天・ボード工事を行う職人の1日の一般的なスケジュールの一例です。

  • 6:30〜7:30 出発・移動
     自宅や会社の作業場から現場へ向かいます。公共交通機関を利用する場合や、自家用車・社用車で移動する場合もあります。
  • 8:00 朝礼・作業開始
     現場に到着するとまずは朝礼を行い、その日の作業内容や注意事項、安全確認などを全員で共有します。その後、準備運動や資材・工具の準備をして作業に取りかかります。
  • 10:00〜10:30 小休憩(30分)
     集中力を保つために短い休憩を挟みます。この時間に水分補給や軽い食事をとる職人も多いです。
  • 12:00〜13:00 昼休憩
     昼食をとり、午後の作業に備えます。現場近くの食堂やコンビニ、持参のお弁当などで済ませることが多く、職人同士のコミュニケーションも活発になる時間帯です。
  • 13:00〜15:00 午後の作業
     午前の続きを中心に作業を進めます。工程によっては、他職種の職人と同時並行で進むこともあります。
  • 15:00〜15:30 小休憩(30分)
     午後の疲れをリフレッシュするための休憩です。この時間に段取りの再確認や道具の手入れをする職人もいます。
  • 17:00 作業終了・片付け
     その日の作業を終了し、現場を清掃・整理。資材や工具の片付け、翌日の準備をして解散します。場合によっては残業が発生することもありますが、工程管理がしっかりしていれば定時退社も可能です。

■ 軽天・ボード工のやりがいと魅力

この仕事の魅力は、やはり“目に見える成果”を実感できる点にあります。施工を終えた後にできあがった空間を見渡すと、「この部屋の壁や天井は自分の手でつくったんだ」と誇りを感じられるものです。

また、仕事の工程がある程度パターン化されているため、技術習得の道筋も明確です。努力と経験を積めば、比較的早い段階で「現場を任される職人」に成長できる可能性があります。独立して仕事を請け負う道もあり、将来的なキャリアの選択肢も豊富です。

■ 求められるスキルと心構え

軽天・ボード工事では、次のようなスキルや姿勢が重要視されます。

  • 正確な作業力:数ミリのずれが後工程に大きな影響を与えるため、丁寧かつ精密な施工が求められます。
  • チームワーク:他業種の職人との連携が多いため、報連相(報告・連絡・相談)をしっかり行うことが大切です。
  • 安全意識:高所作業や電動工具を使う場面があるため、安全管理も徹底しなければなりません。

未経験でも始めやすい職種ではありますが、経験を積めば積むほど技術が身につき、仕事の幅が広がっていきます。道具の扱い方ひとつにも熟練度が表れ、職人としての成長が手に取るように感じられるでしょう。

■ キャリアアップと将来性──一生モノの技術を身につける

軽天・ボード工事は単なる「作業」ではなく、熟練すればするほど周囲から頼られる“技術職”です。職長や現場管理などのポジションにステップアップする道もあり、将来的には独立・開業して自ら仕事を受けることも可能です。

また、公共施設や大型商業施設などの案件に携わるチャンスもあり、自分の仕事が街の風景の一部となる感動も味わえます。年齢を重ねても活躍しやすく、手に職をつけたい方には非常に魅力的な職種です。

これから建築業界を目指す方にとって、長く続けられる安定性と将来性のある道だと言えるでしょう。

■ まとめ:建物の中身をつくる“縁の下の力持ち”

軽天・ボード工は、建物の「見えないところ」を支える仕事です。完成後には目に触れなくなる部分も多いですが、空間の質を左右する非常に重要な工程を担っています。高い精度と美しい仕上がりを追求するこの職種は、建築のプロフェッショナルとしての誇りを感じられる、奥深い仕事です。

ものづくりが好きな方、手に職をつけたい方にとって、軽天・ボード工は大きなやりがいと可能性を秘めた職種と言えるでしょう。

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