建設業界の人手不足解消にはシニア活用がカギ!
建設業界で深刻化する人手不足を解消するには、シニア層の活用が重要です。高齢化が進む中、シニアが働きやすい環境を整えることで、人材確保の新たな道が開けます。
人手不足と高齢化の現状
建設業では、就業者の約1/3が55歳以上を占め、高齢化が顕著です。このため、次世代への技術継承が課題となっています。一方で、年金制度の不安や高齢者雇用制度の整備により、70歳まで働き続けたいと考えるシニア層が増加中です。2021年4月に改正された「高年齢者雇用安定法」では、企業に対し70歳までの就業確保を努力義務として課す動きも進んでいます。
シニア活用が持つ可能性
シニア層を建設業界に活用することは、人手不足解消だけでなく、豊富な経験や技術を次世代に伝える機会を創出します。また、働きがいや柔軟な労働条件を提供すれば、シニアが持つ潜在能力を最大限引き出すことが可能です。
シニアが働きやすい環境を整えるポイント
- 柔軟な雇用形態の提供
フルタイムだけでなく、パートタイムやプロジェクトベースでの雇用を検討します。 - 安全・健康対策の強化
年齢に配慮した作業環境を整え、健康診断や労働時間の管理を徹底することが必要です。 - 技術継承の仕組み作り
シニアが若手を指導する制度を整えることで、知識や経験を組織内に残せます。
シニアが活躍できる職場作りは、建設業界の未来を切り開く鍵となります。企業とシニアが共に成長する環境を整えることで、持続可能な人材活用が実現するでしょう。
シニアが求める働き方の変化:お金から健康と生きがいへ
シニア層は年齢とともに、働く理由が「収入」から「健康維持」や「生きがい」へと変化します。また、定年を境に仕事への価値観も大きく変わることがわかっています。
働く理由の変化
内閣府の調査によると、60歳以上のシニア層が働く理由には年齢による変化が見られます。年齢が上がるにつれて、「収入がほしいから」という動機が減少し、「働くことで老化を防ぎたい」や「仕事そのものが面白い、自分の能力を生かせる」という動機が増加します。これにより、シニア層は経済的な理由だけでなく、健康や生きがいのために働く傾向が強まるといえます。
定年を境に変わる働きがい
日本政策金融公庫総合研究所のアンケート調査では、定年前後で仕事に対する価値観が大きく変化することが明らかになっています。65~70歳の中小企業勤務の男性の場合、定年前は会社の業績向上や自身の昇進を働きがいと感じる人が多かったのに対し、定年後は「自分の知識や能力を活用できること」「顧客の喜び」「同僚や部下からの信頼」といった、人とのつながりや自己実現に働きがいを見出すようになります。
シニアが満足できる働き方とは?
このような変化を踏まえると、シニアが満足できる働き方を提供するには、健康維持や生きがいを重視する職場環境が求められます。具体的には、柔軟な勤務形態や知識を活かせる役割、コミュニケーションが活発な職場づくりが鍵となります。
シニア層の価値観の変化を理解し、それに応える働き方を提供することが、企業にとっても持続可能な成長につながるでしょう。
建設業界の未来を支えるカギは人材確保と働き方改革
建設業界の経営課題解決には、技能労働者の確保や働きやすい環境整備が重要です。特にシニア人材の戦力化や多様な働き方への対応が、業界の持続的発展を支えるポイントとなります。
課題:人材不足と働き方のイメージ
建設業界では、技能労働者の人手不足や高齢化が深刻です。加えて、長時間労働というイメージから新規採用が難しく、特に若年層の確保が課題となっています。一方で、建設業界は災害復興やインフラ整備など社会に不可欠な役割を担うため、人材の安定確保が急務です。
技術力の重要性と人材育成
公共工事における「総合評価入札方式」の導入により、価格だけでなく技術力が評価されるようになりました。このため、技能や経験をもつ人材の採用や育成が経営戦略の中心となっています。特に、コロナ禍を経て需要が高まる復興・整備事業を見据え、受注力を強化することが必要です。
シニア人材と働き方改革
シニア人材を戦力化するためには、多様な働き方を支える労働環境や柔軟な人事制度の整備が欠かせません。たとえば、健康を重視した働き方や、知識と経験を活かせる役割を提供することで、シニア層の積極的な参加を促すことが可能です。
建設業界は社会を支える重要な基盤であり、課題の解決には人材の採用・育成・定着が鍵となります。働きやすい環境を整えることで、未来の建設業界をより強固にする道が開けるでしょう。
建設業でシニア人材を活かす4つのポイント
建設業界がシニア人材を活用するには、柔軟な制度整備や働きやすい環境づくりが重要です。体力的な制約がある中でも、彼らの経験や技能を活かせる場を提供することで、業界全体の持続可能性が高まります。
1. 柔軟な制度や仕組みの導入
シニア人材が意欲を持って働けるよう、制度整備が必要です。
- 定年延長や柔軟な勤務形態:松川電氣株式会社(静岡県浜松市)では定年制を廃止し、役職や勤務時間を個別に調整する仕組みを導入しています。例として、弱視の社員が日没前に業務を終え、週末勤務で補填する制度もあります。
- 公平な評価と昇給:65歳以降も目標達成に応じて現役時並みの賃金を得られる体制を整えています。
2. シニアの能力を活かす役割の提供
各人の技能や適性に応じた役割を用意することがやる気を引き出します。
- 技術指導やOJT:株式会社ラックランド(東京都新宿区)は85歳までの雇用を可能にし、シニアを若手指導に活用。また、Webカメラで現場指示を行うなど、体力負担を軽減しています。
- 職場改善提案:七欧通信興業株式会社(東京都荒川区)では「技術指導員」として活躍するシニア社員が、工事改善の提案を行い採用された事例もあります。
3. コミュニケーションの場づくり
シニアと若手が協力しやすい環境を整えることが、技能継承の鍵です。
- 対話とイベント:株式会社テクノスチールダイシン(栃木県宇都宮市)では、個人面談や懇親イベントを通じて世代間交流を促進。安全衛生委員会にもシニアが参加し、職場環境改善に貢献しています。
4. 健康と安全への配慮
加齢による身体能力の低下を考慮した安全対策が欠かせません。
- 別会社の設立:株式会社忠武建基(東京都杉並区)は危険度の高い現場作業を避け、資材リース業務専任の会社を設立。シニアが安心して働ける環境を提供しています。
- 定期健康診断:年2回の健診を実施し、シニア社員の健康を支えています。
建設業界でシニアが活躍するためには、柔軟な働き方や役割提供、健康配慮が重要です。経験豊かなシニアを活かすことで、業界の発展に大きく寄与できるでしょう。
建設業界でシニア人材を活用するための具体策と助成金活用のすすめ
建設業界はシニア人材が活躍できる素地が整っています。定年延長や雇用管理制度の見直しに加え、助成金制度を活用することで、シニアの能力を最大限に引き出す環境を作ることができます。
シニア人材活用の可能性
建設業界ではすでに高年齢層の就業割合が高く、シニア人材が活躍する基盤があります。高い技術や経験を持つシニアが、若手への技術継承や指導役として力を発揮することで、業界全体の競争力を高めることが期待されています。特に、柔軟な働き方の導入や役割分担の工夫により、体力的な制約を補うことが可能です。
助成金制度の活用
シニア活用の環境整備には費用が伴いますが、「65歳超雇用推進助成金」制度が活用できます。この助成金は以下を対象としています:
- 65歳以上への定年引き上げ
- 高年齢者向けの雇用管理制度の整備
- 有期契約労働者の無期雇用への転換
これらの取り組みにより、事業者はシニア人材が働きやすい環境を整えながらコストを抑えることができます。
実例を参考にした導入の推進
今回紹介した事例企業の取り組みでは、シニアに特化した柔軟な勤務形態や技術指導役の設定、コミュニケーションの場づくりが成功の鍵となっています。これらの事例を参考に、自社の環境に適した施策を導入することが効果的です。
助成金制度の利用と柔軟な働き方の導入を組み合わせることで、シニア人材の活躍を促進し、建設業界の課題解決に貢献する道が開けるでしょう。