塗装職人が同じ建築業界で転職しやすい業種は?

建築業界には多種多様な専門職があります。その中でも「塗装職人」は、建物の仕上げを担う重要な役割を果たしています。塗装は建物の美観を整えるだけでなく、防水や防錆など建物を長持ちさせるための大切な工事です。

職人として技術を磨き続けることも一つの道ですが、キャリアの途中で「別の職種に挑戦したい」と考える方も少なくありません。では、塗装職人がこれまでの経験を活かしやすい転職先はどのような業種なのでしょうか。本稿では、同じ建築業界の中で比較的転職しやすい職種を整理してみます。

1. 防水工事業

塗装職人のスキルと特に親和性が高いのが「防水工事業」です。塗料を均一に塗る作業、仕上げの美観を整える技術、下地処理の重要性を理解している点など、防水工事で必要とされる感覚は塗装と非常に似ています。

例えば、シート防水やウレタン防水では、材料を丁寧に均一に塗布することが求められます。塗装職人は刷毛やローラーの扱いに慣れているため、同じ「塗る仕事」としてスムーズにスキルを移行できるのです。また、防水は塗装と並んでリフォームや大規模修繕工事で需要が高いため、安定した仕事量が期待できる業種といえます。

2. 内装仕上げ工(クロス職人・床職人など)

塗装職人は「美観を整える目」を養っている点が強みです。そのため、クロス貼りや床仕上げといった内装仕上げ工への転職も比較的スムーズです。特に、細かい部分の仕上がりにこだわる意識や、色彩のバランスを見る感覚は内装にも直結します。

また、リフォーム需要の増加に伴い、内装工事は今後も需要が高い分野です。外壁塗装から内装仕上げへの転職は「外回りから中回りへ」と守備範囲を広げるキャリアチェンジであり、幅広い仕事を請け負えるようになることで、将来的な独立にも有利になります。

3. 左官工事業

塗装と同じく「下地処理」が重要となるのが左官工事です。モルタルや漆喰を扱う左官仕事では、平滑に仕上げるためのコテさばきや細やかな感覚が求められます。塗装職人は壁面の状態を見極め、段差や傷を補修してから塗装を行う経験を持っているため、その経験を左官に応用することが可能です。

近年では自然素材ブームにより珪藻土や漆喰仕上げの需要が高まっており、左官職人は再評価されています。塗装から左官へ転身することで、従来の「色をのせる仕事」から「素材で仕上げる仕事」へとスキルの幅を広げられるのが魅力です。

4. サイディング工事業

外壁工事の中でもサイディングは新築・リフォームを問わず需要が高い分野です。塗装職人は外壁の劣化状態を日々目にしているため、サイディング材の特徴や施工の必要性について理解しやすい立場にあります。

サイディング工事では、外壁材の取り付けと目地のシーリング処理が重要ですが、塗装経験者は既にシーリング材の扱いに慣れている場合も多く、技術的な親和性は高いといえます。また、サイディングは定期的なメンテナンス(塗装や張替え)が必要となるため、将来的には塗装とサイディングの両方を手掛けることで仕事の幅を大きく広げることができます。

5. リフォーム営業・現場管理職

塗装職人として現場経験を積んだ人材は、リフォーム会社や工務店で営業や現場管理職に転身するケースもあります。実際に現場で作業してきた経験があるため、お客様に施工内容を具体的に説明できるのは大きな強みです。机上の知識だけでなく、リアルな工事の工程や仕上がりイメージを伝えられるため、信頼を得やすいのです。

また、現場管理職としても「どの作業にどれくらいの時間がかかるか」「職人同士の連携で注意すべき点はどこか」といった感覚を自然と持っているため、工程管理の正確性が増します。体力的な負担を減らしつつキャリアアップを図れる選択肢といえるでしょう。

6. 建築板金工事

建築板金は、屋根や外壁の金属部分を加工・施工する仕事です。塗装職人は、錆や劣化といった金属部分の弱点をよく知っているため、その経験を活かしやすい職種です。板金は塗装と同様に建物の耐久性を左右する工事であり、外装工事全般に対応できる職人としての幅を広げることができます。

転職に向けて意識すべきポイント

塗装職人が同じ業界で転職を考える際には、以下の点を意識すると良いでしょう。

  1. 既存スキルを活かせるかどうか
     →「塗る」「仕上げる」「色を整える」などの経験が応用できる業種を選ぶ。

  2. 需要の安定性
     →リフォーム需要が高まっている分野(防水、内装、サイディングなど)は狙い目。

  3. 将来のキャリアプラン
     →職人として技術を極めるのか、現場管理や営業に進むのかを早めに描く。

成功事例:塗装職人からのキャリアチェンジ

ケース1:防水工事へ転身し独立

30代半ばのAさんは、外壁塗装を10年以上経験してきた職人でした。年齢を重ねるにつれて体力面の不安を感じ、「より専門性を高めて独立したい」という思いから防水工事業へ転職。塗装で培った“塗る技術”を活かしながら新しい材料の扱いを学び、数年後には独立を果たしました。

現在はマンション大規模修繕工事を中心に安定した仕事を受注し、年収も以前の1.5倍以上に増加。塗装経験がそのまま強みとなった好例といえます。

ケース2:リフォーム営業にキャリアアップ

20代後半のBさんは、戸建て住宅の外壁塗装をメインに働いていましたが、結婚を機に「体力仕事よりも長く続けられる働き方を」と考え、リフォーム会社の営業職へ転職しました。

現場経験があるため、お客様から「説明が分かりやすい」「安心できる」と信頼を得やすく、入社1年目からトップセールスを記録。現在は営業リーダーとして後輩育成にも携わり、職人時代には想像していなかったキャリアを築いています。

ケース3:内装仕上げへの挑戦

40代のCさんは、外壁塗装の仕事を長年続けてきましたが、リフォーム需要の拡大を受けて内装工事へ転職。クロス貼りや床仕上げを学ぶうちに「お客様が完成後すぐに喜ぶ姿を見られる」というやりがいを実感。外壁だけでなく、内装も手掛けられる職人として幅広く活躍し、地元の工務店から欠かせない存在となっています。

事例から学べること

これらの成功事例から分かるのは、塗装職人としての経験は「他職種でも十分に武器になる」ということです。塗装で磨いた繊細な感覚や顧客対応の経験は、防水・内装・営業など多方面に応用できます。転職に不安を感じる必要はなく、むしろキャリアの幅を広げるチャンスと捉えることが大切です。

まとめ

塗装職人は、培った技術を活かせる業種が多く存在します。特に防水工事や内装仕上げ、左官、サイディング工事などはスムーズに移行しやすく、リフォーム需要の高まりにより安定した仕事が見込めます。また、現場管理や営業といったキャリアチェンジも可能であり、体力面を考慮した働き方への移行にも対応できます。

「塗装の経験は他では通用しないのでは?」と不安に思う方もいるかもしれませんが、実際には塗装で培った繊細な感覚や仕上げへのこだわりは、建築業界のさまざまな職種で高く評価されるスキルです。大切なのは、自分がどの方向にキャリアを広げたいかを明確にし、その目的に合った業種を選ぶことです。

塗装職人としての経験を次のステージに活かすことで、建築業界の中でさらに大きな飛躍を遂げることができるでしょう。

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