建設業界の人材不足と外国人労働者の定着問題
建設・建築業界では、有効求人倍率やアンケート調査からも明らかにされているように、深刻な人手不足が続いています。さらに日本では急速に高齢化が進んでおり、特に労働集約型で専門的な知識や技術が求められる建設業界は、この問題が今後も深刻化する見込みです。しかし、人手不足だからといって、若い人材や安価な労働力を単純な基準で採用することは、ミスマッチを引き起こし、結果的に大きなリスクとなります。特に、文化や言語が異なる外国人労働者の場合、雇用しても仕事や待遇が合わず、離職や逃亡するケースが多発しています。
人材のミスマッチは、時間や費用、精神的な負担など多方面で損失をもたらします。このため、なぜミスマッチが起こるのかを理解し、対策を講じることが非常に重要です。今回は、外国人労働者の定着に向けたポイントについて考えてみましょう。
外国人労働者の分類
これまで日本は、主に大卒相当の高度人材を柔軟に受け入れてきましたが、単純労働者の受け入れについては格差拡大の観点から制限してきました。しかし、近年ではこの方針が変わり、国内の外国人労働者は次の5つの形態に大別されます。
- 専門的・技術分野の就労者
約23万人が該当し、企業経営者や管理者、大学教授、医師、弁護士などのホワイトカラーが対象となります。 - 身分に基づく在留者
約45万人が該当し、永住者や日系人、また日本人の配偶者など、在留中の活動に制限がない外国人です。 - 技能実習生
約25万人の技能実習生が含まれ、農業、建設、食品、介護などの分野で働くことができます。 - 特定活動者
約2万人が該当し、看護師や介護福祉士候補者、建設・造船分野の労働者が対象となります。 - 資格外活動者
約30万人の留学生がこのカテゴリーに含まれ、アルバイトとして週28時間以内の就労が許可されています。
外国人労働者が定着しない理由
外国人留学生に対するアンケート調査では、定着に関する問題として「外国人留学生向けの求人が少ない」という回答が最も多く挙げられました。これに加え、以下のような日本企業や社会の受け入れ体制に課題があることが明らかになっています。
- 求人の少なさ
- 就職活動の仕組みが理解できない
- 適性試験や能力試験が難しい
- 業界や企業研究の方法がわからない
- 日本語での面接が難しい
- 企業が求める人材像が不明
- 仕事内容が曖昧
- 書類の作成が難しい
人材の適正を判断するのは難しいですが、テストの成績や書類の形式的な評価に頼るよりも、最初はその人の雰囲気や礼儀など、会社の文化に合いそうかどうかを重視することが有効かもしれません。多様性を尊重し、柔軟に対応する姿勢が、これからの企業に求められているのです。最終的には、その人材が優秀かどうかではなく、「この人と一緒に働きたい」という気持ちが最も大切だと言えるでしょう。
相手の話を聞くことと自分の発言を日本人以上に意識する
外国人労働者は異国で働いているというだけでも、仕事や生活、そして人間関係において多くの不安を抱えています。仕事を円滑に進めるためには、まず効果的なコミュニケーションを取り、お互いの考えを「伝え、理解する」ことが何よりも大切です。
1. 中・長期的な視点を持つ
外国人労働者の多くは技能実習生として来日しており、特に建設業などでは、準備万端で来るというよりも、すぐに稼ぎたい、日本語が苦手、無資格・未経験でも働きたいという理由で建設業を選ぶケースが多いです。そのため、最初から即戦力として期待するのではなく、まずはさまざまな作業を経験させながら適性を見極め、中・長期的な視点で「業界や職場の文化に慣れさせる」ことが重要です。
2. 感情的な対応は絶対に避ける
異なる言語や文化を持つ人同士が理解し合うのは容易ではなく、ストレスが溜まることもありますが、感情的になって暴言や暴力をふるうことは絶対に避けるべきです。最近ではハラスメントに対する意識が高まり、特に外国人労働者は日本以上にハラスメントや暴力に敏感です。日本特有の上下関係や奉公的な態度は通用せず、労働基準法やコンプライアンスを十分に理解しておくことが不可欠です。
3. 共通の言語や仕組みを使ったマニュアル作成
仕事を覚えてもらうためには、共通の理解ができるものがあると早く馴染んでもらえます。たとえば、作業手順を誰にでも理解しやすいように数字や記号で示すのは効果的です。機器の操作手順を1・2・3・4と番号で表示したり、触ってはいけない部分にバツ印を付けたりといった工夫が、外国人労働者にもわかりやすく、労災事故の防止にもつながります。
外国人労働者の影響は今後ますます大きくなる
外国人労働者の受け入れに対しては、社会の治安や秩序への懸念もありますが、グローバル化が進む中で外国人労働者を排除することは、業界全体の衰退につながる可能性があります。現在、大都市のコンビニでは多くの外国人学生が働いており、安価なサービスの提供が可能になっています。これにより住民は便利で安いサービスを享受していますが、外国人労働者が増えると、国内の賃金格差が拡大する懸念もあります。しかし、社会や産業の発展には外国人労働力の受け入れが不可欠であるとも言えます。
最後に、外国人労働者とのミスマッチを防ぐためには、お互いの条件を明確に理解し、それを日々のコミュニケーションや対応で調整していくことが大切です。労働者は単なる労働力ではなく、相手の立場を理解し、思いやりを持って接することで、より良い関係を築くことができるでしょう。
あとがき
外国人労働者が職場に定着するためには、ただ雇用するだけでなく、職場環境や人間関係を整え、長期的な視点で支援していくことが非常に重要です。特に建設・建築業界のような労働集約型の業界では、言語や文化の違いにより、外国人労働者が働きづらさを感じ、早期に離職してしまうケースも少なくありません。しかし、そうしたミスマッチを防ぎ、彼らが職場に定着できる環境を整えることで、双方にとって大きなメリットを享受することができます。
外国人労働者が定着するための秘訣として、まずはコミュニケーションの質を高めることが挙げられます。彼らは異国で働いているため、日常生活や仕事において多くの不安を抱えています。そのため、ただ指示を出すだけではなく、しっかりと話を聞き、互いに理解を深めることが必要です。特に言葉の壁がある場合、簡単な日本語やジェスチャー、ビジュアルマニュアルなどを活用し、わかりやすい形で意思疎通を図ることが効果的です。定期的なフィードバックやサポートを通じて、労働者の成長を促し、彼らが自信を持って働けるようにすることが大切です。
また、外国人労働者を長期的な視点で育成することも重要なポイントです。即戦力としての期待が高い業界ではありますが、特に未経験者や日本語が不慣れな労働者に対しては、最初から完璧を求めず、段階的に成長させるためのサポート体制が必要です。彼らの適性を見極め、得意な分野を伸ばしながら、業務に少しずつ慣れてもらうことで、長期的に戦力となる人材へと育てることができます。
さらに、感情的な対応を避けることも不可欠です。外国人労働者は、日本の文化に馴染むこと自体が一つの挑戦です。もし仕事中にミスや問題があっても、感情的に叱責するのではなく、冷静に対応し、理解を促す姿勢が求められます。日本では許容される上下関係や厳しい指導が、外国人労働者にとってはハラスメントと捉えられることもあるため、注意が必要です。企業として、労働基準法やコンプライアンスに対する意識を徹底し、適切な環境を提供することで、安心して働ける職場を作り出すことが大切です。
最後に、共通のルールや仕組みを作ることで、外国人労働者にとっても働きやすい職場を整えることができます。たとえば、業務手順を示すマニュアルには、視覚的なシンボルや数字を取り入れ、言葉が通じなくても操作方法がわかるように工夫することができます。こうした取り組みは、ヒューマンエラーや労災事故の防止にも効果的です。
外国人労働者の定着には、短期的な視点ではなく、中・長期的な視野で彼らの成長を支え、企業と労働者双方が利益を享受できる環境を構築することが不可欠です。思いやりと柔軟性を持って対応することで、外国人労働者との信頼関係を築き、共に成長していける強固なチームを作り上げることができるでしょう。