建築業界での女性従業員の現状

建設業は昔から男性中心の業界とされており、現在も女性従業者の数は少ないままです。しかし近年では、建設業における人手不足を背景に、女性の労働力や様々な能力が求められています。
女性が働きやすい環境を整えるために、業界全体で労働環境の改善や職場イメージの刷新が進められています。

この記事では、建設業で女性の活躍が求められる理由と、実際に女性が活躍している職種やそのための対策について紹介します。

建設業における女性従業者数の現状

建設業の女性従業者比率の低さ

建設業では、全就業者数に占める女性従業者の比率が16.7%と非常に低く、他の業界と比べても低い方から3番目に位置しています。この理由として、以下の点が挙げられます。

  1. 業界に対する女性の人気が低く、人が集まらない
  2. 業界特有の事情が影響している

2. 建設業の女性就業者が少ない理由

次に、建設業において女性従業者が少ない理由について見ていきましょう。

労働環境による敬遠

建設業において女性従業者が少ないのは、労働環境が女性に適していないためです。女性が敬遠する労働環境には以下のようなものがあります。

  1. 女性用トイレ・更衣室の未整備
    建設現場では仮設トイレが設置されますが、女性専用のトイレを設置するのが難しい場合があります。現場が狭い場合、仮設トイレは1台だけしか設置できず、男女共用となってしまいます。
    また、更衣室や休憩所も女性専用のものが不足していることがあります。このように、女性が快適に働ける環境が整っていない現場が多いのです。
  1. 出産・子育てとの両立が難しい
    建設業の仕事は、出産や子育てとの両立が難しいと認識されがちです。工期が厳しく設定されているため、天候不順などで遅れが出ると納期に間に合わせるために急がなければならないことが多く、多忙な時期には育児休暇や健康診断のための休暇を取得しにくいと考えられています。

また、妊娠中や子育て中の現場作業は肉体的に負担が大きいため、これも女性が敬遠する理由となっています。

  1. 資材・工具の大きさ・重量が女性向きでない
    建設現場で使用する資材や工具は大きく重いため、女性にとって扱いにくいものが多いです。
    軽くて丈夫な新建材もありますが、その規格は統一されており、女性用に小さく軽いものはほとんどありません。また、プロ仕様の電動工具は重いため、これも女性が建設業を敬遠する一因となっています。

職場イメージによる敬遠

次に、建設業の職場イメージが女性に敬遠される理由を見ていきましょう。一般的に、建設業には以下のようなイメージが持たれています。

1. 男性社会である


建設業は重い資材を持ち上げたり、太い杭を打ち込むといった力仕事が多いため、力のある男性が適任というイメージがあります。このため、「建設業で仕事ができるのは男性のみであり、出世できるのも男性だけ」という認識が広まっています。

実際、建設工事の施工管理では現場作業員に指示を出し、厳しく注意することも求められるため、女性にとっては難しいと感じられがちです。こうした理由から、建設業は男性社会であるというイメージが強く、女性は敬遠してしまう傾向にあります。

2. 3K職場である


建設業は「きつい、汚い、危険」の3K職場として知られています。建設工事現場では、クレーン車やパワーショベルなどの重機が稼働し、電動ドリルの音が響き渡る中で作業員たちが忙しく動き回っています。確かに、建設工事の現場はどの業務も楽なものはなく、土やコンクリート、鉄筋、油などで作業着が汚れることが多いです。

また、足場からの落下や積み上げた資材の崩落など、生命や身体の安全が脅かされる危険もあります。空調の効いたオフィスでのデスクワークに比べると、建設現場の仕事は「きつい、汚い、危険」というイメージが強く、女性が避ける傾向にあるのも無理はありません。

以上のように、建設業界の職場イメージが、女性にとって働きづらいと感じられる要因となっており、これが女性就業者が少ない理由の一つです。

3. 建設業で女性活躍が求められる理由

次に、なぜ建設業で女性の活躍が求められているのか、その理由を見ていきましょう。

人手不足の解消

上記のように、さまざまな要因が重なり、建設業界は深刻な人手不足に直面しています。従来のように男性労働力だけでは、この不足を補うことが難しくなっています。そのため、人手不足を解消するために、女性の労働力が求められています。

女性の持つ能力への期待

建設業で女性活躍が求められるもう一つの理由は、女性の持つ能力が期待されているからです。これはあくまでも傾向であり、全ての女性に当てはまるわけではありませんが、一般的に以下のような能力や特徴が挙げられます。

  1. コミュニケーションが得意
    女性は男性に比べ、他人との意思疎通や情報交換が得意です。男性は結論を簡潔に伝える傾向がありますが、女性は丁寧に説明して相手に理解してもらうことに努めます。
    このコミュニケーション能力は、設計や工事施工管理、インテリアコーディネートなどの分野で特に役立ちます。これらの分野では、注文主や施工業者との連絡調整が不可欠であり、また工事の施工管理においても現場作業員や設計者、注文主、行政機関との密な連絡調整が必要です。
  1. 優しさ・繊細さがある
    女性は、相手の感情の変化を読み取り、相手を傷つけないようにコミュニケーションを図る能力があります。また、物を造り上げる仕事において、男性にはない丁寧さや繊細さが表れることが多いです。この優しさや繊細さは、設計やインテリアコーディネート、左官や建具の製作、交通整理の警備員などの分野で生かすことができます。
  1. 辛抱強く着実にステップアップできる
    女性は、男性に比べ、仕事や勉強において辛抱強く続けることができ、着実に成果を出しながらステップアップしていく傾向があります。この能力は、設計やCAD操作、建設職人などの技能工、一般・特殊車両運転などの分野で生かすことができるでしょう。
  1. 色彩感覚が優れている
    一般的に、女性は色彩感覚が優れているとされています。この感覚は、建築デザインやインテリアコーディネートの分野で特に重要です。
  1. 生活感覚が優れている
    生活感覚とは、日常生活を安全・安心・快適・便利に過ごすための視点です。女性は、どのような部屋の配置が良いか、どのような家具が便利でセンスが良いか、収納スペースの大きさや配置、便利な立地条件など、日常生活に必要な要素を総合的に判断する能力があります。この生活感覚は、設計やインテリアコーディネートの分野で特に役立ちます。

以上のように、建設業界では女性の能力や特徴が多くの職種や仕事にマッチしており、女性の活躍が求められているのです。

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